NetSuiteのプロジェクト管理ツールレビュー│2024 年

高度なプロジェクト管理ツール│予算（と経験）がある場合におすすめ

企業内の全業務を単一のプラットフォームで統合できるプロジェクト管理ツールをお探しの方の中には、オラクル社のNetSuiteを目にしたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。NetSuiteには、財務、人事、顧客サービス、在庫管理など様々な業務を扱うモジュールが搭載されており、すべて単一のダッシュボードからアクセスが可能です。

NetSuiteは、各担当者の個々のタスクに至るまでプロジェクトのあらゆる側面を計画・追跡することができるプロジェクト管理モジュールを搭載しています。リソースの割り当て、マイルストーンに対する進捗追跡、プロジェクト予算管理、プロジェクトの進展に合わせたリアルタイム調整などができます。

しかし、より高度なプロジェクト管理機能にアクセスするには、追加料金を支払う必要があり、基本料金も安くはありません。また、NetSuiteは公式サイトに価格を表示していないため、窓口に問い合わせて、あなたの企業のニーズに合った見積もりを提案してもらう手間が発生します。

また、価格設定が割高なだけでなく、無料トライアルを提供していません。しかし、NetSuiteの「（無料）製品ツアー」を利用すれば、ソフトの提供内容について重要なインサイトが得られます。

NetSuiteは機能が豊富な上、操作が複雑になっています。インターフェイスは、日本語を始めとする多言語をサポートしていますが、機能がごちゃごちゃしており、ナビゲートしずらいです。NetSuiteの機能は、特に生産性ソフトに慣れていない場合は完全に理解するのに時間がかかるかもしれません。

基本・応用プロジェクト管理機能で全プロセスを合理化

NetSuiteのプロジェクト管理機能は、主に顧客管理に必要不可欠な管理ツールを提供しています。例えば、プロジェクトの所要時間、連絡先、取引を追跡できるツールがあり、便利ではありますが、基本的には顧客記録の作成に役立つ機能であり、プロジェクト管理のニーズをすべて満たすには不十分かもしれません。

NetSuiteのプロジェクト管理機能を有効にすれば、より高度なプロジェクト管理にアクセスできますが、追加料金を支払う必要があります。これらのアドバンスツールを使えば、初期の計画段階から顧客請求に関する最終的な作業まで、ワークフローのすべてのステップを管理できます。

プロジェクトスケジュールで簡単タスク管理

プロジェクトスケジュールタブはプロジェクトワークスペースのコアとなる機能で、各プロジェクトのタスクの作成、編集、割り当て、追跡ができます。各タスクについては、開始日、終了日、ステータス、担当者、作業時間とコストの見積もりを確認できます。チームメンバーの進捗状況の更新、作業時間の記録、メモの追加、タスクにファイルアップロードなど様々な操作が可能です。

また、関連するタスクを設定して、プロジェクトのフェーズを管理することもできます。例えば、終了から開始（FS）、開始から開始（SS）、終了から終了（FF）、開始から終了（SF）の関係を設定できます。さらに、[指定日までに終了] (FNLT) という依存関係を追加したり、間にタイムラグがあるタスクを作成したりすることで、ワークフローの簡単カスタマイズが可能です。

複数のタスクビューで異なるプロジェクトフェーズに対応

NetSuiteは、主に「計画、追跡、比較」という3 つの手段でタスクを可視化できるようになっています。計画モジュールでは、各タスク間の関係、作業とコストの見積もりレベルを確認することができ、プロジェクトのスケジュール作成に最適です。一方、追跡モジュールでは、現在のタスクの進捗状況を確認したり、予定日とベースラインの日付を比較することができ、更新が多いプロジェクト作業などに便利です。

比較モジュールでは、目標日や見積もり作業時間など、タスクに加えた変更をハイライト表示できます。これにより、プロジェクトの当初の計画と現在の計画を簡単に比較し、効率性を確認することができます。

さらに、「ガントチャートビュー」からタスクを見ることができ、タイムライン上にプロジェクトを表示し、タスクの進捗とマイルストーンを明確に提示することができます。NetSuiteのガントチャートはデザイン性に優れ、非常に見やすくなっています。また、プロジェクトスケジュールを拡大したりスクロールすることができます。また、クリティカルパスのような重要なメトリクスを強調表示することもできます。

効率的なリソース管理

NetSuiteでは、従業員や外注業者をプロジェクトリソースとして管理し、プロジェクトや個々のタスクに割り当てることができます。各リソースは、定義された役割（例：アシスタントマネージャー）を設定し、休日や休暇などの勤務日と非勤務日を指定した個別の勤務カレンダーを作成できます。

リソース割り当て機能は特に便利で、適切なリソースを「予約」して、そのリソースが利用可能かどうかやスキルセットに基づいて特定のプロジェクトに割り当てることができます。このツールを使えば従業員の利用状況やプロジェクトへの貢献度を把握し、生産性を高めることができます。

柔軟なプロジェクト請求機能

NetSuiteは、請求書発行プロセスを効率化したり、予想される利益率を把握するのに役立つ様々な請求書発行ツールを提供しています。

「プロジェクト開始前に決まる固定料金」、「あらかじめ設定されたマイルストーンに基づく増分請求」、または「プロジェクトに費やされた材料、リソース、時間に基づく請求形式」の3つの請求オプションがあり、最終金額を柔軟に設定することができます。プロジェクトの種類に応じて、特定の請求スケジュールを作成し設定することもできます。

NetSuiteの使い方はそこまで難しくないが、習得には時間がかかる

NetSuiteは、効率的なユーザーエクスペリエンスを実現していますが、同様のソフトウェアと比較して、平均的に習得に時間が掛かります。NetSuiteのインターフェイスはモダンで見た目も良いですが、特にプロジェクト管理に慣れていない場合、機能があまりにも多いので圧倒されるかもしれません。

ソフトに慣れ、機能をフル活用できるようになるまで、ある程度の時間と労力が掛かります。なお、NetSuiteはソフトの導入に関する専門的な支援と、操作のコツを学ぶための追加トレーニングを提供しています。

NetSuiteでプロジェクト管理を始めるには

NetSuiteは、ネット上で完了できる簡単なサインアップ（登録プロセス）や、無料トライアルを提供していません。

利用を開始するには、電話またはチャットで営業担当に問い合わせるか、NetSuite公式サイトのホームページの右上にある無料製品ツアーボタンをクリックして、業界や業種などあなたの企業に関する基本情報をオンラインフォームに入力します。送信後、オラクル社の担当者から連絡がくるので、あなたのニーズなどについて相談する流れになります。

あなたの会社の事業規模やプロセス、年間売上高、解決したい問題などに基づいて、あなたに合ったソリューションを担当者が提案してくれます。ERP、CRM、プロジェクト管理など、NetSuiteソフトの特定のモジュールが提案される場合があります。

プロジェクトダッシュボードはカスタマイズ可能

NetSuiteのプロジェクトダッシュボードは、個々のプロジェクトに関するすべてのメトリクス、ステータスアップデート、必要な情報にアクセスできます。また、プロジェクトタスクの作成、リソースの管理、ガントチャートへのアクセス、時間と経費の入力などのクイックリンクがあります。

プロジェクトダッシュボードは、ウィジェット（ポートレット）をドラッグ＆ドロップしてカスタマイズできますので、プロジェクトのタイムライン、リソー スの利用状況、財務状況など、必要な情報を自由に表示させることができます。なお、ダッシュボードの右上にあるパーソナライズタブをクリックすると、ポートレットにアクセスできます。

プロジェクトセンターとプロジェクト損益(P&L)タブ

プロジェクトリソースで、標準のコンサルタントロール（権限）を割り当てるとプロジェクトセンターへのアクセスを許可することができます。コンサルタントやプロジェクトマネージャーはこの機能を使ってプロジェクトに関するサマリー情報を閲覧することができます。NetSuiteのプロジェクトセンターには、アクティビティ、プロジェクト、時間と経費、レポート、ドキュメントなどのタブがあり、必要な情報に素早く簡単にアクセスできるようになっています。

もう一つの便利な機能としてプロジェクト損益(P&L)タブがあり、各プロジェクトの進捗状況を追跡しコストを監視できます。このツールでプロジェクトの収益、コスト、利益、マージンを確認できますが、何よりもリアルタイムで情報が表示されるので、プロジェクトの現在の収益状況を素早く把握できる点が気に入りました。

内蔵レポートツール

NetSuiteはレポート機能が豊富で、プロジェクトのタスクやリソースの利用状況から、プロジェクトの料金予測やプロジェクトの収益性まで、ほぼすべてのレポートを作成することができます。2〜3クリックで簡単にレポートを作成できます。

プロジェクト採算性レポートは、実際のプロジェクトの収益とコストを比較し、全ライフスパンを通してすべてのアクティブなプロジェクトの採算性を明確にできます。

シンプルで効率的なコミュニケーションツールとファイル共有

NetSuiteのチームコラボレーションツールは革新的というわけではありませんが、チームメンバー間のスムーズなコミュニケーションを促す使いやすいシンプルな機能を提供しています。

例えば、プロジェクトやタスクにメモやコメントを追加できる他、メッセージアプリを提供しています。Bluchatと呼ばれるアプリで、1対1やグループディスカッション用のチャンネルを作成できます。チャット画面から直接ファイルを共有したり、タスクを作成することもできます。

また、NetSuiteをSlackやMicrosoft Teamsのようなサードパーティのコミュニケーションツールと連携することも可能です。

チームダッシュボードとコミュニケーション

プロジェクトダッシュボードをチームメンバーと共有することで、全員に同じページを表示させることができます。チームメンバーが進捗状況の更新、作業時間の記録、タスクのステータス変更などを実行する度に、瞬時にダッシュボードに反映されます。

ファイル共有

NetSuiteのファイルキャビネットからドキュメントをアップロード、保存、整理することができます。特定の履歴にファイルを添付できるので、トランザクション、顧客、プロジェクトなどの関連エントリとドキュメントを簡単に関連付けることが可能です。テキスト文書、スプレッドシート、画像など、さまざまなファイルをサポートしています。

また、ファイルキャビネットにアクセスするための役割と権限を設定することで、特定のドキュメントを閲覧・編集できる担当者を設定できます。

モバイルアプリ

PCバージョンで利用できるすべての機能にアクセスできるわけではありませんが、NetSuiteのモバイルアプリは外出先でビジネスを管理するのに非常に便利です。モバイルアプリでは、タスクの管理、タイムトラッキングや経費情報の入力、レポートへのアクセス、顧客データの更新などが可能です。なお、アプリはiOSとAndroidの両方のデバイスで利用可能です。

サポートオプションは複数あるが、営業担当の対応はイマイチ

NetSuiteは「ベーシック」、「プレミアム」、「アドバンスド」の計3種類のカスタマーサポートパッケージを提供しています。ベーシックサポートでは、コミュニティフォーラム、ナレッジベースへのアクセス、クリティカルな問題に対する24時間365日のサポートなどが受けられます。プレミアムサポートでは、クリティカルな問題かどうかに関わらずフリーダイヤルで対応してもらえ、優先ケースのキューイング、週末サポートが受けられます。

アドバンスドカスタマーサポート（ACS）では、ビジネスの成長に合わせてNetSuiteシステムを最適化するための継続サポートを提供しています。

カスタマーサポートは日本語で受けられますが、残念ながらオラクルの営業担当の対応はイマイチです。まず、公式サイトでは、営業部署の対応時間は月曜から金曜の午前8時から午後8時（太平洋標準時）までと記載されていますが、連絡してみたところなかなか繋がりませんでした。日本語と英語の窓口の両方を試しましたが結果は同じでした。

NetSuiteのカスタマーサポートからレスポンスをすぐに貰えることもありましたが、情報量が少なかったです。

メールで問い合わせをした際も、価格や機能に関して曖昧な答えしか返ってきませんでした。営業担当者であるにもかかわらず、プロジェクト管理モジュールの正確な価格を教えてくれず、詳しい情報を提供できるはずの専任の担当者にもつないでもらえませんでした。

全体として、営業担当の対応は満足のいくものではありませんでした。営業担当者はユーザーにとって第一の窓口であり、必要なときに必要な情報を提供できるべきなので、この点は残念です。

しかし、製品の機能に関しては、NetSuiteのナレッジセンターがとても細かに情報提供しているので、知りたいことの答えは検索さえすれば全て見つけることができました。NetSuiteのナレッジセンターには、サービスを使用するにあたり役に立つ記事や動画が幅広く掲載されています。

サービスは包括的だが、価格設定が不鮮明

NetSuiteの最安プランを選択した場合、年間サブスクリプション料金は、最低11,988ドル（$1 を146円で換算した場合175万円相当）で、ユーザー毎にさらに1,188ドル（17万3,400円相当）を支払うことになります。年会費に加え、顧客のニーズに合わせてソフトを設定しカスタマイズを実施するための導入費用も1回発生します。これは通常、高い時間給（100ドル以上＝14,600円相当）が発生するサードパーティのライセンス取得済みの専門家によって処理されますので、この点も全体的なコストを計算する際に考慮すべきポイントです。

NetSuiteは、価格を一般公開しておらず、顧客のビジネス要件に基づいたカスタム見積もりベースのためコンサルテーションを予約する必要があります。それでも、コアモジュールの年間使用料は通常数百万円にのぼり、予算が限られている中小企業にとっては理想的なソリューションではないかもしれません。

例えば、NetSuiteのStarter Editionパッケージは、月額$999.00（年額請求）からで、さらにユーザー1人当たりの月額料金（同じく年額請求）が加算されます。最大10ユーザーまで追加でき、ERP、CRM、Eメールマーケティング、タイムトラッキングやプロジェクトレポートなどの基本的なプロジェクト管理ツールが利用できます。なお、より高度なプロジェクト管理機能には別途費用がかかります。

包括的なサービスが受けられるのは良いですが、NetSuiteはパッケージに含まれる全機能を利用する予定がない場合、高価となってしまいます。プロジェクト管理ツールだけが必要なら、monday.comのようなシンプルなプロジェクト管理ソフトを利用した方が間違いなく良いでしょう。使い易いですし、安価で様々なツールが使えます。